開催日時 2025年2月25日(火) 14:00~16:15
形式 ハイブリッド形式( 会場参加 / オンライン視聴 )
会 場 31Builedge霞が関プラザホール <虎ノ門駅 徒歩3分>
(〒100-0013 東京都千代田区霞が関3丁目2-5 霞が関ビルディング1階)
参加方法 事前登録制 / 参加無料 ※会場参加は先着順です
●主催者挨拶
●基調講演
公益財団法人ベネッセこども基金 青木 智宏 様(代表理事/事務局長)
●事例紹介
企業等の協力事例や、支援活動を行っている団体の事例紹介
日本証券業協会 石津 知則 様(社会連携本部 本部長)
株式会社プレジィール 小林 正典 様(常務取締役 執行役員 ブランド企画部 部長)
あじさいの集い富士見 小池 妙子 様(代表)
認定NPO法人 STORIA 佐々木 綾子 様(代表理事)
もりサポ塾 川崎 文 様(代表)
●パネルディスカッション
事例紹介にご登壇いただいた企業・団体様によるパネルディスカッション
2025年2月25日(火)、31Builedge霞が関プラザホールにて、「こどもの未来応援国民運動シンポジウム」を開催しました。支援の輪を広げるため、協力企業や支援団体の代表者らが登壇し、さまざまな意見が交わされました。
シンポジウムの冒頭、主催であるこども家庭庁の鈴木主査が政策について紹介。2024年に公布された「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」や、こどもの未来応援国民運動について解説し、「こどもの未来応援国民運動を通じて、最前線でこどもの支援に取り組んでいる団体を支援したい」と語りました。
続いて公益財団法人ベネッセこども基金の青木事務局長が、「日本の子どもの貧困問題のこれまでとこれから~公益財団法人ベネッセこども基金の視点から~」というテーマで基調講演を行いました。
青木事務局長は、戦後から現在までの日本のこどもの貧困問題の変遷を振り返って解説。2020年~2025年でこどもの貧困対策が大きく前進し、地方自治体での計画強化や支援制度の整備が進み、民間によるこどもの居場所や包括的支援、企業による社会貢献活動も増加していると話しました。
続いて127団体にこれまで約3億円を助成した「ベネッセこども基金」を通して、10年間で出会った助成団体の活動内容から見えてくる傾向を紹介。学習支援が中心だった傾向から、居場所づくりなどの包括型支援が増加し、近年は外国ルーツのこども、若者世代、ヤングケアラー、性教育など、「経済的困難」と「特定のニーズ」を持つこどもに支援対象が多様化しているとのこと。
地域ごとの特色ある取り組みにも触れ、都市部ではアウトリーチ支援など孤立した家庭へのサポートが重視される傾向で、過疎地域では「ナナメの関係」(親でも教師でもない第三者とこどもとの新しい関係)による接点づくりや多世代交流ができる居場所づくりが進められる傾向があると説明しました。
今後の課題として、義務教育が終わると途切れてしまう自治体の支援、教育と福祉をつなぐ人材の配置と育成、組織横断的な連携強化といった脱・縦割り(業務範囲や責任による分断)をあげました。
最後に、こどもが求めているものと大人が用意する支援内容とのミスマッチが起きる問題について触れ、「善意や理想よりこどもが何を求めているのか、こどもの声を聴くこと、こどもが自分の言葉で意見を述べる場づくりこそが必要」と締めくくりました。
続いて、こどもの未来応援国民運動に協力する企業2社と、こどもの未来応援基金の「未来応援ネットワーク事業」採択実績があり現場で実際に支援活動を行っている3団体の代表が登壇。それぞれの取組を発表しました。
株式会社プレジィール常務取締役 執行役員 ブランド企画部 小林 正典 部長
「GRAMERCY NEWYORK」をはじめとする5つの洋菓子ブランドを展開する株式会社プレジィールからは、常務取締役 執行役員 ブランド企画部の小林部長が登壇。
同社はお菓子やサービスを通じて人が人を思うやさしさを提供していきたいとの願いから、こども向け職業・社会体験施設「キッザニア東京」にパティシエ体験ができる「パティスリーショップ」パビリオンをオープン。こどもの未来応援国民運動の一環である「マッチングネットワーク推進協議会」を通じて、「キッザニア東京」の入場チケットをひとり親家庭支援団体等へ提供したほか、全国の支援団体へクリスマスプレゼントとして自社のお菓子の提供を行ったことなどを紹介しました。
日本で唯一の認可金融商品取引業協会の日本証券業協会からは、社会連携本部の石津本部長が登壇。SDGsで掲げられている社会的課題に証券業界全体で積極的に取り組む一環として、こどもの貧困対策支援に取り組んでいると話しました。
証券会社とこどもの支援に取り組む団体を結ぶプラットフォーム「こどもサポート証券ネット」の運用、こどもの未来応援国民運動の一環である「こどものみらい古本募金」(古本等を活用した寄付プログラム)への参画などの取り組みを紹介。さらに、証券会社の保有株について受け取った株主優待などを、こどもの未来応援基金などにこれまで約1億円寄付していることを発表しました。
どんなこどもにも学びの場をということを目的に、さまざまな事情で塾に通えない中学生への学習サポートをする「もりサポ塾」。川崎代表は、同団体の取組として、週1回の学習サポート、夏期講習(8月5日間)、進路相談、お弁当配布(月1回)、学習ボランティアのための勉強会(4月)などの取組を紹介。
また、塾に通う中で成長したこどもたちの事例を紹介するとともに、「社会に支えられた経験を通し、いつか社会を支える大人へと成長してほしい」「地域に根ざし、さまざまな事情で塾に通えない生徒たちに学習するチャンスをあたえられる場所であり続けたい」と語りました。
あじさいの集い富士見の小池代表は、80歳で退職し、地元の人々の役に立ちたいと、自宅を改修して非営利活動の任意団体「あじさいの集い富士見」を立ち上げ、居場所としてこども食堂を開設しました。
同団体は今では、こども食堂月2回、フードパントリー月1回、支援が必要な親子の家庭訪問月2回、経済的に厳しい状況にある家庭のこどもの食事付き学習支援週1回、ヤングケアラー支援、高齢者健康教室月2回といった活動を展開。中でも、小池代表はヤングケアラーというものがどういうものなのか、世間への認知を高める必要性があると訴えていました。
最後に、認定NPO法人STORIAの佐々木代表理事が登壇。佐々木代表理事は、STORIAは“愛情が循環する未来へ”をビジョンに掲げ、困難な状況にある家庭とこどもたちに「包摂する事業」、社会に対し「社会に理解と変化が⽣まれる事業」を⾏うことで、社会課題の根本的な解決に取り組んでいることを説明。
具体的には、仙台市などと連携してアウトリーチでこどもや保護者と「つながる」、相談や訪問⽀援で「⾒守り・⽀える」、そして「支え続ける」ための事業として、ひとり親などの困難な状況にある小中高生が安心して過ごせるサードプレイス(居場所)事業を実施。さらに保護者への就労支援など、こどもと保護者を対象とした包摂的な支援事業を⾏政や企業他機関等と連携して行っていることを紹介しました。
パネルディスカッションでは、ファシリテーターをベネッセこども基金の青木事務局長とこども家庭庁の鈴木主査が務め、パネリストとして、プレジィールの小林部長、日本証券業協会の石津本部長、もりサポ塾の川崎代表、あじさいの集い富士見の小池代表、STORIAの佐々木代表理事が登壇。
支援を行う上での課題や行動を起こしたい人へのアドバイスなど、支援の輪を広げるための実践的な話し合いが行われました。
まず「支援をしていてよかったこと」について、川崎代表は「こどもが成長する瞬間を見られると一番うれしい」と回答。佐々木代表理事は「日頃、我慢をし、自分の気持ちを表現できない子が多い。居場所で人と関わることで気持ちを表現できるようになり、自分たちも大人と一緒に居場所を運営しようと考えてくれるようになるのがうれしいです。アルバイトをしながらボランティアに来る居場所を卒業した高校生から『恩返ししたいから』と聞いた時は胸が熱くなりました」と打ち明けます。
こどもに関わる支援をしたいが、関わり方がわからない人に向けてのアドバイスについては、佐々木代表理事が「支援する側と支援される側の壁は作らず、こどもの話を聴き、相手を尊重するというスタンスを大切にしています」と説明。小池代表は「観察の目を持ち、こどもたちに笑顔で接する。必ずこどもの目線に立って声をかけ、こどもとできるだけじっくり関わるようにしてほしい。上からの目線は避けてほしい」と話しました。
今後企業として協力したいことを問われると、「始めることよりも続けることが難しい。続けるためには利益を出し続ないといけないので、そこをモチベーションにしたい。続けることを大事にし、会社の成長と世の中への貢献を拡大したい」と小林部長。
石津本部長は「証券会社ならではの支援のやり方をしっかり考え、事務負担のかからない形で支援できるよう、より普及させたい」と語りました。
シンポジウム終了後には、登壇者と来場者による交流会を実施。短い時間ながら、それぞれの取組などについて熱心に話す姿が印象的でした。
交流会では、さまざまな立場でこどもの支援を行う方々が語り合っていました。